ブロックチェーンウォレットの導入・開発と運用設計のポイント
2025/06/18
2025/06/18
ブロックチェーンサービスを立ち上げる際、ウォレットの導入と設計は、ユーザー体験にも運用の安定性にも直結する重要な要素です。
とはいえ、「MetamaskやTrust Walletとの連携で十分なのか」「自社でEmbedded Walletを開発するべきか」「バックエンドのトランザクション処理はどこまで分離するべきか」といった判断には、技術面とUX面の両方を見通した設計が欠かせません。
特に、ガス代の肩代わりや秘密鍵管理の方針、ウォレットの自動生成といったWeb3特有の課題は、従来のWebサービスにはない設計的な“ひっかかり”を生みやすく、導入段階で多くのプロジェクトが迷いがちです。
本記事では、ブロックチェーンウォレットの基礎知識から、ユーザーと運営の両視点に基づく設計パターン、導入判断の軸となる要素や実践事例までを網羅しています。
まずは、ウォレットにはどんな種類があり、それぞれがどんな使われ方をしているのか、基本の整理から始めていきましょう。
ブロックチェーンウォレットの基本と種類を理解する
ブロックチェーンウォレットは、単なる資産の保管手段ではなく、ブロックチェーンネットワークへの入り口として、きわめて重要な役割を果たします。ここでは、ウォレットの基本的な役割から、種類の違い、ユーザー向けと運営向けでの使い分けまでを整理し、導入前に押さえるべきポイントを解説します。
ウォレットの基本機能とブロックチェーン上の役割
ブロックチェーンウォレットは、暗号資産の保有・送受信に加え、ユーザーの認証やトランザクションへの署名といった役割を担います。各ユーザーに固有の秘密鍵と公開鍵が付与され、秘密鍵を用いて送金や署名を行うことで、ユーザーはブロックチェーンネットワークと安全にやり取りが可能となります。
秘密鍵の管理方法やバックアップの有無がセキュリティに直結するため、UX設計と同時にセキュリティ設計を行うことが重要です。
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ホット/コールド、カストディ/非カストディの違いと選定の考え方
ウォレットは、接続状態と管理者の違いで分類されます。
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ホットウォレット
常時インターネットに接続されており、利便性は高いですが、ハッキングなどのリスクも大きくなります。 -
コールドウォレット
オフライン環境で管理されるため、セキュリティ性が高く、長期保有や大規模資産の管理に向いています。
また、管理方式の違いとして以下があります。
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カストディ型
秘密鍵を運営側が保管する方式です。ユーザーは鍵を意識することなく利用できますが、資産を完全に自身で管理できるわけではありません。
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非カストディ型
秘密鍵をユーザー自身が保有します。分散型金融(DeFi)などの思想と親和性が高い一方で、リスク管理は自己責任となります。
形式を誤って選択すると、ユーザーの資産喪失や運営上のトラブルに直結するリスクがあります。
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ユーザー向けと運営向けウォレットの大きな違い
ユーザーが利用するウォレットは、主に利便性とUXが重視されます。MetamaskやTrust Walletなど、すでに普及しているウォレットとの連携は、ユーザーにとっての使いやすさにつながります。
一方、運営側のウォレットは、以下のように用途別に設計されるべきです。
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バックエンド用ウォレット
自動トランザクション処理用
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資産管理用ウォレット
コールドウォレットやマルチシグによる安全管理
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ガス代供給用ウォレット
限られた残高でガス代のみを支払う
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開発検証用ウォレット
エンジニアが開発時に使用
両者の目的を明確に分けることで、不要な設計ミスやセキュリティリスクを回避できます。
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ユーザー体験を高めるブロックチェーンウォレット設計
ブロックチェーンサービスにおいて、ユーザーの初回体験や操作のしやすさはプロダクトの成功を左右します。ウォレットの導入時には、初心者でも迷わず使える設計と、リテラシーが高いユーザーへの対応の両立が求められます。本章では、ユーザー体験(UX)を最適化するブロックチェーンウォレット設計の各手法を解説します。
既存ウォレット(Metamask等)を利用する選択肢とWalletConnectの活用
既存ウォレットを活用することで、導入コストを抑えつつ、慣れた操作性を提供できます。多くの暗号資産ユーザーはMetamaskやTrust Walletといった一般的なウォレットをすでに使用しています。こうした既存ウォレットと連携させることで、学習コストを抑え、導入の敷居を下げることが可能です。
その際に重要なのが、WalletConnectなどの汎用的な接続プロトコルです。これに対応することで、ユーザーは自分の好きなウォレットを自由に選べます。
WalletConnect対応により、多様なウォレットをサポートできるUXが実現できます。
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Embedded Walletの導入理由と、リテラシーの壁を乗り越える設計とは
Embedded Walletの導入は、ブロックチェーンの知識がないユーザーにも対応できる設計として有効です。多くの一般ユーザーにとって、秘密鍵の管理や暗号資産の送金は高いハードルです。そのため、ウォレットを自社サービスの一部として組み込むEmbedded Walletが注目されています。
たとえば、アカウント登録と同時にウォレットが自動生成され、ユーザーがガス代を気にせず利用できます。これは、ガス代を運営が肩代わりするメカニズムによって実現可能です。「秘密鍵を自分で保管してください」といったUXの障壁は、離脱率の大幅な増加につながるため注意が必要です。
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カストディ型と非カストディ型のUX比較とトレードオフ
ウォレットの管理方式は、ユーザー体験とセキュリティリスクのバランスを左右します。
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カストディ型
運営が秘密鍵を管理するため、初心者には使いやすい反面、資産の所有権はユーザーにありません。
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非カストディ型
ユーザーが秘密鍵を保管し、自己責任で管理する方式。自由度は高いが、リスクも伴います。
サービスの目的や対象ユーザーによって、どちらが適しているかを慎重に選ぶ必要があります。UXを重視するならカストディ型、安全性と分散性を重視するなら非カストディ型が有効です。
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Web2的なオンボーディング設計とウォレット自動生成の流れ
従来のWeb2的なUXを取り入れた設計により、ブロックチェーンの難しさを意識させない導線が構築できます。たとえば、アカウント作成時にメールアドレスやSNSアカウントでログインするだけで、自動的にウォレットが作成される設計です。
これでユーザーは「ブロックチェーン」や「秘密鍵」という言葉を意識することなくサービスを利用できます。ただしユーザーに複雑な操作を要求すると、多くの人がサービスの利用を断念してしまいます。
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運営視点で考えるブロックチェーンウォレットの運用設計
ユーザー向けだけでなく、プロジェクトを支える運営側にとってもウォレットの設計と運用は非常に重要です。そこでここからは、開発・運用フェーズにおいて実際に考慮すべきウォレットの種類や管理体制、セキュリティ対策について、用途別に詳しく解説します。
システム連携用ウォレット(バックエンド署名処理)
システム連携用ウォレットは、アプリケーションの裏側で自動的にトランザクションを処理するために用意されるウォレットです。ユーザーのアクションに応じてサーバー側でトランザクションを生成・署名し、ブロックチェーンに送信する設計では、サーバーが秘密鍵を安全に保持している必要があります。
AWS KMS(Key Management Service)やHSM(ハードウェアセキュリティモジュール)といった鍵管理サービスを活用することで、秘密鍵の漏洩リスクを低減できます。
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資産管理用ウォレット(コールド/マルチシグ活用)
資産管理用ウォレットでは、企業や団体が保有する暗号資産を安全に保管することが最大の目的となります。コールドウォレット(オフライン保管)は、攻撃を受けるリスクがほぼないため長期保管に適しています。一方、運用頻度が高い場合にはマルチシグウォレット(複数人の承認が必要な仕組み)が有効です。
セキュリティ面を考えると、秘密鍵を一人の担当者が保有する体制は危険です。必ず複数人で承認できる設計にすることが推奨されます。
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ガス代供給用・検証用ウォレットとそのリスク対策
ガス代の支払いに使うウォレットや、開発検証に用いるウォレットは、用途に応じて残高や管理方法を分ける必要があります。ガス代支払い用のウォレットには多額の資産を置かず、必要最小限の残高にとどめることが基本です。検証環境用のウォレットは、あくまで開発者が使いやすいMetamaskなどを用い、ネットワークもテストネットを使うことで資産損失リスクを防ぎます。ガス代供給用ウォレットには、万が一漏洩しても実害が少ない構成を徹底することが重要です。
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秘密鍵の安全管理:AWS KMSやHSMの活用方法
運営側で秘密鍵を安全に管理するには、クラウドベースの鍵管理サービスや専用ハードウェアの導入が不可欠です。AWS KMSでは、エンジニアが直接秘密鍵に触れずに署名操作が可能になります。HSM(Hardware Security Module)を用いると、より高いセキュリティ基準で鍵の保護ができます。金融機関レベルのセキュリティが求められる運用では導入が進んでいます。
秘密鍵が漏洩した場合、取り返しのつかない損害を招く可能性があるため、最初から設計に組み込むべき最重要項目です。
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ブロックチェーンウォレット開発・導入の実例と判断軸
実際の導入事例や検討パターンをもとに、ブロックチェーンウォレットの開発や導入を判断するための具体的な視点を整理します。PoC(概念実証)から始める戦略や、外注・内製の選定など、プロジェクト推進の現場で直面する意思決定の軸を明らかにします。
Gincoウォレットの導入事例とアプリ化成功の要因
Gincoウォレットの事例は、自社アプリとしてウォレットを組み込んだ成功例として非常に参考になります。Gincoは金融サービスや暗号資産取引所に向けて、安全かつUXに優れたウォレットを提供しています。ユーザーにとって馴染み深いスマホアプリのUXを採用しつつ、暗号資産の送受信、NFT管理、ガス代の最適化までを実現しました。これはユーザーの目的を見据えた導線設計と、事前のPoCによる検証が成功の鍵となった好例といえるでしょう。
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ユーザーの暗号資産リテラシーに応じた実装選定のパターン
ユーザーのリテラシーに応じて、ウォレットの実装形式を柔軟に変える戦略が効果的です。たとえば、Web3リテラシーの低いユーザーには、Embedded Walletやソーシャルログインによる非カストディ型を組み合わせた設計が有効です。一方で、リテラシーの高いユーザーには、MetamaskやWalletConnectを活用する設計が適しています。ですが一律のUI設計ではカバーしきれないため、ターゲット層ごとに使い分ける戦略が必要不可欠です。
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外注・内製の判断軸と、PoCから始める戦略的開発手法
ウォレット開発は専門性が高く、外注か内製かの判断を誤るとコストとリスクが膨らみます。外注のメリットは、ノウハウの蓄積されたプロフェッショナルな実装が短期間で可能な点です。内製のメリットは、継続的な運用やカスタマイズの柔軟性にあります。どちらを選ぶにしても、まずはPoCで小規模な試験運用から始めることが重要です。本格導入前のPoCによって、ユーザ体験・パフォーマンス・セキュリティ要件の実現性を事前に見極めましょう。
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まとめ
ブロックチェーンウォレットの導入と設計は、ユーザー体験の質とシステム運用の安定性を大きく左右する中核的な要素です。本記事では、ウォレットの基本から、ユーザー向け・運営向けの視点、開発・運用の判断軸に至るまで、幅広く解説しました。特に、秘密鍵の管理方式やガス代の負担設計、Web2的UXへの対応といった観点は、従来のWebサービスとは異なる設計的な工夫が求められます。
また、PoCによる段階的な導入や、ユーザーのリテラシーに応じたUX設計、セキュリティ要件に応じたウォレット分離といった手法を取り入れることで、より現実的かつ安全な運用が実現可能です。最終的な判断は「どんなユーザー体験を提供したいのか」「運営のリスクをどこまで許容できるか」によって決まります。
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